こんにちは!
今回は小川未明の『月夜とめがね』です。
おばあさんに訪れた、月夜の不思議な出会いをどうぞ♪
あらすじ
※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!
ある月の明るい晩のことでした。静かな町の外れにおばあさんが一人で住んでいて、窓の下で針仕事をしていました。おばあさんは目が悪くなっていて、針に糸を通すのに苦労していました。ランプの火が穏やかに部屋を照らし、おばあさんは若い頃のことや離れて暮らしている孫娘のことを思い出しながら針仕事をしていました。
しばらくすると、外の戸を叩く音が聞こえました。おばあさんは誰も訪ねてくるはずがないと思いながらも、窓を開けてみると、そこには黒いめがねをかけたひげのある男が立っていました。男は「めがね売り」だと言い、月夜の美しい町でめがねを売り歩いていると話しました。
おばあさんは目がかすんで困っていたので、男に自分に合うめがねがあるか尋ねました。男は箱からべっこうぶちの大きなめがねを取り出し、おばあさんに渡しました。おばあさんがそのめがねをかけてみると、驚くほどよく見えたので、大喜びでそのめがねを買いました。
その後、おばあさんは針仕事を再開し、めがねのおかげで楽に糸を通すことができました。おばあさんはめがねをかけたり外したりして楽しんでいましたが、遅い時間になったので仕事を片付けて休もうとしました。
すると、また外の戸を叩く音がしました。今度は十二三歳の美しい少女が立っていました。少女は香水製造所で働いていると言い、帰り道で石につまずいて指を怪我してしまったと話しました。おばあさんは少女を家に招き入れ、めがねをかけて少女の傷を見ようとしました。
ところが、めがねをかけたおばあさんが見たのは少女ではなく、美しい蝶でした。おばあさんは蝶が人間に化けて訪ねてきたのだと気付き、蝶を花園に連れて行きました。しかし、途中で蝶は姿を消してしまいました。
おばあさんは家に戻り、「みんなおやすみ」とつぶやいて、自分も寝る準備をしました。本当に美しい月夜の晩でした。
この作品の時代背景
小川未明の「月夜とめがね」は、大正時代(1912-1926年)の日本を背景にしていると考えられます。この時代背景に関するいくつかの要点を挙げてみます。
1. 大正時代の日本
- 社会変動と近代化: 明治維新以降、日本は急速に近代化を進めていました。大正時代もその流れを引き継ぎ、都市化や産業の発展が進んでいました。
- 文化の多様化: 西洋文化の影響が強まり、文学や芸術においても多様な表現が見られるようになりました。小川未明もこの時代の文壇で活躍しました。
- 大正デモクラシー: 民主主義的な風潮が広まり、労働運動や女性運動などが活発化しました。社会全体が自由と個人の権利を求める時代でした。
2. 物語の特徴
- 田舎と町の静寂: 物語の舞台は静かな町の外れであり、緑豊かな自然が描かれています。これは大正時代の日本の地方の風景を反映しています。
- 針仕事とランプ: おばあさんが針仕事をしている描写や、ランプの火が使われていることから、まだ電気が普及しきっていない時代であることがわかります。
- 人間と自然の調和: 物語には自然の美しさや、月光が照らす幻想的な風景が描かれています。これは大正時代の文学における自然との調和や神秘的な要素を反映しています。
3. 小川未明の影響
- 児童文学の父: 小川未明は「日本児童文学の父」と称され、大正時代から昭和初期にかけて多くの作品を残しました。彼の作品には、人間の善良さや自然の美しさを描くものが多く、この物語もその一環といえます。
- 幻想的な作風: 未明の作品には幻想的な要素が多く含まれており、「月夜とめがね」もその例外ではありません。彼の作風は、大正時代の文学における一つの特徴を示しています。
このように、「月夜とめがね」の時代背景は、大正時代の日本の風景や社会状況、そして小川未明の作風に深く根ざしています。
小川未明について
小川未明(おがわ みめい)は、日本の大正・昭和期を代表する児童文学作家であり、「日本児童文学の父」とも称されています。彼の作品には、子供たちに夢や希望を与える物語が多く含まれており、その中で「月夜とめがね」も例外ではありません。
小川未明の生涯と作品
- 生誕と教育:
小川未明は1882年(明治15年)、新潟県に生まれました。東京大学法学部に入学しましたが、在学中に文学に興味を持ち、文学活動を開始しました。 - 文学活動の始まり:
彼の文学活動は明治末期から大正時代にかけて本格化しました。未明は、特に児童向けの物語に力を注ぎ、その独特な作風で多くの読者を魅了しました。 - 「月夜とめがね」との関連:
「月夜とめがね」は、未明の作品に特徴的な幻想的で神秘的な雰囲気を持っています。この物語では、月夜の静かな町で、おばあさんと不思議な訪問者たちとの出会いが描かれています。未明の作品には、こうした日常と非日常が交錯する場面がよく登場します。 - 幻想と現実の融合:
未明の作品は、現実世界と幻想世界が巧みに融合しており、「月夜とめがね」にもその特徴が見られます。おばあさんが出会うめがね売りや蝶に変身する少女は、現実の中に非現実的な要素を持ち込むキャラクターです。 - 自然との調和:
自然描写が美しく、自然と人間が調和する様子が描かれています。「月夜とめがね」でも、月夜の風景や草花が細かく描かれ、物語の幻想的な雰囲気を高めています。 - 人間の善良さ:
未明の作品には、人間の善良さや温かさがよく描かれています。おばあさんがめがね売りの男や少女に親切に接する姿勢は、未明の人間観を反映しています。 - 晩年と影響:
小川未明は1950年(昭和25年)に亡くなるまで、数多くの児童文学作品を残しました。彼の作品は多くの子供たちに読み継がれ、日本の児童文学に大きな影響を与えました。
「月夜とめがね」に見る小川未明の特徴
「月夜とめがね」は、小川未明の作風をよく表している作品の一つです。物語の中で描かれる静かな町の風景や、月夜の幻想的な雰囲気、不思議な登場人物たちとの出会いは、未明の文学の特徴を反映しています。特に、現実と幻想が交錯するストーリー展開は、未明の得意とするところであり、読者に夢や希望を与える要素となっています。
このように、小川未明の生涯や作風は、「月夜とめがね」を通して垣間見ることができます。未明の作品は、時代を超えて多くの人々に愛され続けています。
あおなみのひとこと感想
心温まる作品で、浄化されたような気がします笑
静かな町と月夜の美しい描写は読みながらイメージが膨らみますね♪
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