【朗読】白/芥川龍之介~あらすじ、重要シーン、考察まとめ~

今回は芥川龍之介の名作「白」をご紹介します。

一匹の犬が、臆病さや罪悪感と向き合いながら、再び自分を取り戻すまでの感動的な旅路を描いた物語です。

心の葛藤や勇気の意味を深く考えさせられる一方で、物語の結末には胸を打つ瞬間が待っています。

読み終えた後、あなたの心に残るものは何でしょうか?

本記事では、『白』の解説を行っていきます。

\耳から作品を楽しみたい方は、全編を以下YouTubeで朗読しております/

この記事を読んでわかること
  • 『白』の物語概要とあらすじ
  • 『白』のメッセージや考察
  • 『芥川龍之介』について
目次

『白』のあらすじと登場人物について

あらすじ

※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!

芥川龍之介の短編「白」は、一匹の犬を主人公にした、悲しみと勇気の物語です。

ある春の日、白という名の犬は、友達である黒犬が犬殺しに狙われている場面に遭遇します。
恐怖にかられた白は、その場を逃げ出してしまい、黒犬を見捨ててしまいます。

この出来事がきっかけで、白の体は不思議なことに真っ黒に変わってしまいます。
自分がかつての「白」ではなくなったことにショックを受けた白は、飼い主の家に戻るものの、子供たちは彼を見知らぬ犬として扱い、追い払われてしまいます。

途方に暮れた白は、町をさまよい歩き、やがて数々の危険と戦う「黒犬」として知られるようになります。
列車に轢かれそうな子供を救い、大蛇から猫を守り、さらには狼と戦うなど、幾度も命をかけて人々を助ける白。

しかし、その姿を誰も「白」とは認識せず、彼の心には深い孤独が残ります。

やがて白は、再び飼い主の家に帰ることを決心します。
彼が心に抱いていたのは、かつての優しい主人や子供たちと最後に一度だけでも会いたいという切なる願いでした。

そして、真夜中にひっそりと家に戻った白は、昔の犬小屋の前で疲れ果てて眠り込んでしまいます。

翌朝、子供たちは彼を見つけ、「白が帰ってきた!」と喜びます。
白は、子供たちの目に映る自分の姿が、かつての白い犬として戻っていることを感じ、安堵の涙を流します。

物語は、白の心が報われた瞬間に幕を閉じます。

この作品は、勇気とは何か、自分の本質とは何かを問いかけると同時に、喪失と再生の物語でもあります。
読後には、白の姿が心に深く残ることでしょう。

主な登場人物

  • 白(しろ)
    物語の主人公である犬。
    かつては真っ白な体をしていましたが、友達である黒犬を見捨ててしまったことから体が真っ黒に変わってしまいます。

    臆病だった自分を恥じ、勇敢な行動を取るようになりますが、孤独を抱え続けます。
  • 黒(くろ)
    白の友達で、お隣の飼い犬。物語の冒頭で犬殺しに狙われ、白に助けを求めますが、見捨てられてしまいます。
    白の体が黒く変わる原因となった犬です。
  • 犬殺し
    犬を捕まえて殺すことを生業にしている男。黒犬を罠にかけようとします。
    白にとっての恐怖の象徴であり、物語の転換点を生む存在です。
  • お嬢さん
    白の飼い主の娘。
    白が黒くなってしまったため、最初は彼を別の犬だと誤解し、追い払ってしまいますが、最後には白が戻ってきたことを喜びます。
  • 坊ちゃん
    お嬢さんの弟で、白の飼い主の息子。
    お嬢さん同様、白が黒くなったことで彼を見知らぬ犬と勘違いし、追い払いますが、最後には白を再び受け入れます。
  • ナポレオン(ナポちゃん/ナポ公)
    白が町をさまよっている間に出会った茶色の子犬。
    大正軒というカフェに住んでおり、白に対して親しみを感じます。

    彼と別れる際、白の名前が「白」であることに驚きますが、敬意を持って「白のおじさん」と呼びます。

『白』の重要シーンまとめ

この章では「白」のキーとなるシーンをまとめています。

場面
黒犬を見捨てる場面

白が友達である黒犬を犬殺しから助けようとするものの、恐怖にかられてその場から逃げ出してしまうシーンです。

この瞬間、白は自分の臆病さに直面し、その結果として体が真っ黒に変わってしまいます。
このシーンは、物語全体の基盤となり、白の心の葛藤と成長の出発点となります。

場面
白が黒く変わり、家族に追い払われる場面

白が真っ黒になった体で飼い主の家に戻り、お嬢さんや坊ちゃんに見知らぬ犬として扱われ、追い払われるシーンです。

かつての自分でなくなったことへの悲しみと孤独が強調され、白の心に深い傷を残します。

場面
白が黒犬として勇気ある行動を示す場面

白が「黒犬」として知られるようになり、列車に轢かれそうな子供を救ったり、大蛇から猫を守ったり、狼と戦ったりする場面です。

これらの行動は、白がかつての臆病な自分から脱却し、勇敢さを身につけたことを示しています。

同時に、この勇敢さの裏には、黒く変わってしまった自分への絶望と孤独があることが暗示されています。

場面
再び飼い主の家に戻る決意と帰還

長い旅を経て、白が再び飼い主の家に帰ることを決心し、真夜中に戻ってくるシーンです。

白はもう一度だけ飼い主や子供たちに会いたいと願い、これが彼の最後の願いとなります。

このシーンでは、白が心の中で過去の自分と向き合い、再生の象徴として家に戻る決意を固めます。

場面
お嬢さんと坊ちゃんが白を再び受け入れる場面

朝になり、子供たちが白を発見し、「白が帰ってきた!」と喜ぶシーンです。

白は、子供たちが自分を認識し、再び受け入れてくれたことに安堵し、涙を流します。

ここで、白はようやく心の救済を得ることができ、物語は感動的なクライマックスを迎えます。

おしまい
あおなみ

この作品は、勇気とは何か、自分の本質とは何かを問いかけると同時に、喪失と再生の物語でもありますね。
読後には、白の姿が心に深く残ることかと思います。

『白』の考察や気づき

「芥川龍之介」が『白』を通して伝えたかったメッセージを、以下のように考察しました。

  • 勇気と自己認識の葛藤
    物語の中心には、白という犬が自分の臆病さと向き合い、勇敢さを手に入れるまでの葛藤が描かれています。

    黒犬を助けられずに逃げ出したことで、自らの臆病さを痛感し、それが「黒く変わる」という形で外見にも表れます。

    白はその後、勇敢に行動することで、自分を取り戻そうとしますが、その過程で自分を見失い、孤独に苦しみます。

    このように、芥川は人間が自己認識の中で抱える葛藤や、自分の弱さとどう向き合い、克服していくかというテーマを描いていると考察しました。
  • 罪悪感と贖罪
    白が黒犬を見捨てたことで、罪悪感に苛まれ、それが彼の心と体を黒く染めてしまいます。

    白はその罪を償うために、さまざまな困難や危険に立ち向かいますが、どれだけ努力しても過去の過ちから完全に解放されることはありません。

    芥川は、罪悪感から逃れることの難しさや、贖罪のために人が取るべき行動について深く問いかけていると考えられます。
  • 再生と希望
    最終的に白は、子供たちに再び受け入れられ、自分を取り戻すことができます。

    これは、どんなに苦しい状況にあっても、再生と希望があることを示唆しています。

    芥川は、人生における再生の可能性や、自己を再び見つけることの大切さを、この物語を通して伝えようとしているのかもしれません。
あおなみ

芥川は「白」という物語を通じて、自己の弱さと向き合い、それを克服する勇気と、自分を取り戻すための旅の重要性を描いていると考察しました。

芥川龍之介について

芥川龍之介の生涯と背景

芥川龍之介は1892年、東京に生まれました。
幼少期に母親を亡くし、母方の叔父に養子として引き取られました。

この経験は彼の繊細な感受性と深い内面的な苦悩に影響を与えたとされています。
東京帝国大学(現在の東京大学)では文学を学び、在学中に執筆を始めました。

彼の初期の作品である「羅生門」や「鼻」は、日本文学に新風を吹き込み、彼を一躍有名にしました。

芥川と「白」の関連性

芥川の作品「白」は、彼の人生や精神的な葛藤と密接に関連していると考えられます。

芥川は生涯を通じて、精神的な不安や苦悩に苦しみ、その多くが彼の作品に反映されています。
「白」において、主人公である白犬が自己の臆病さに直面し、罪悪感に苛まれる姿は、芥川自身の内面の葛藤を象徴しているように感じられます。

芥川は、自身の中にある弱さや不安を直視し、それを文学作品として昇華させることで、自らの内面を探求し続けました。

彼の多くの作品には、人間の心の闇や、社会や道徳に対する懐疑が色濃く描かれています。
これは「白」においても、白犬が自己の弱さを克服しようとする姿や、社会における孤独感といったテーマに反映されています。

人間の心理への鋭い洞察

芥川は、人間の心理を鋭く描写することで知られており、「白」でもその才能が発揮されています。

白犬の心の葛藤や、真っ黒に変わってしまった自分に対する嫌悪感、そして再び白に戻ることを渇望する姿は、自己認識や罪悪感といった普遍的なテーマを扱っています。

これらのテーマは、芥川が人間の内面を深く理解し、それを文学作品として表現する才能を持っていたことを示しています。

芥川の晩年と「白」

芥川は晩年、精神的な疲労や不安に苦しみ、自殺を考えるほどの深い絶望に陥っていました。

彼は1927年、35歳の若さで自ら命を絶ちました。
「白」の物語の中で描かれる、白犬が孤独と絶望の中で再生を求めて戦う姿は、芥川自身の生き方と重なる部分があります。

白犬が最後に再び家族に受け入れられ、安堵の涙を流すシーンは、芥川が生涯求め続けた「救済」や「再生」の象徴とも捉えられるでしょう。

芥川龍之介の影響と遺産

芥川の作品は、日本文学のみならず、世界文学にも大きな影響を与えました。

彼の作品は、短い中にも深い洞察と普遍的なテーマを盛り込み、今なお多くの読者に読み継がれています。

「白」のような作品を通じて、芥川は人間の内面を鋭く描き出し、その普遍性を伝え続けています。

あおなみ

芥川龍之介の人生と作品を理解することで、「白」の背後にある深いテーマや作者の意図がより明確に浮かび上がってきますね。

『白』のひとこと感想

あおなみ

「白」は、臆病さや罪悪感に苦しみながらも、勇気を振り絞り再生を求める犬の物語でしたね。外見が変わっても心の本質は変わらないというメッセージが胸に響きました。
白が報われて本当に良かった~!!


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