平凡な巡査・睦田が偶然から英雄へと変貌する物語「老巡査」。
何気ない日常の中に潜む運命の皮肉と、人生の予測不可能性を描くこの作品は、読者に「本当に大切なこと」を問いかけます。
夢野久作が紡ぐこの不思議な世界で、あなたはどんな教訓を得るでしょうか?
社会の評価と自己認識のズレ、そして思わぬ瞬間に訪れる幸運。
ページをめくるたびに、あなたも「小さな偶然」が持つ力を考えずにはいられないでしょう。
\耳から作品を楽しみたい方は、全編を以下YouTubeで朗読しております/
- 『老巡査』の物語概要とあらすじ
- 『老巡査』のメッセージや考察
- 『夢野久作』について
『老巡査』のあらすじと登場人物について
あらすじ
※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!
睦田巡査は、50歳を過ぎても平凡な巡査として東京郊外の別荘地を巡回している。
ある夜、金色の煙草の吸い殻を見つけるが、重要視せずに踏みにじって通り過ぎてしまう。
翌朝、その地域の富豪・倉川男爵家で強盗殺人事件が発生。
犯人は覆面の二人組で、事件の発生時刻は睦田の巡回時間と一致していた。
何も異常に気づかなかった彼は、上司から叱責され、責任を取らされて退職する。
その後、彼は工場の門衛として働くようになり、ある日、ルンペンが吸っている金色の煙草を目にする。
それが一年前の事件と関係があると感じ、ルンペンに話を聞くと、事件に関与していることが明らかになる。
睦田の情報で、警視庁は犯人を逮捕。
睦田は事件解決の功労者として倉川男爵から懸賞金を授与されるが、過去の失態を思い出し、心苦しく感じる。
最後には感激のあまり気絶してしまう。
主な登場人物
- 睦田(むつだ)巡査
主人公。東京郊外の別荘地を巡回する老巡査。
50歳を過ぎて未だに部長にもなれず、特筆すべき功績も過失もない平凡な巡査人生を送っている。病身の妻と多くの子供を養っているため、辞職することもできず、何事もなく過ぎることを願うだけの日々を過ごしている。 - 倉川男爵
事件の被害者の家主。
東京郊外の別荘に住む富豪。事件当時、旧友の大使を神戸に出迎えに行っており留守だった。事件後、懸賞金を出して犯人を捕まえようとする。 - ルンペン(浮浪者)
睦田が門衛として働く工場の前にたむろしていた浮浪者。
金口の煙草を吸っていたことで睦田の注意を引き、結果的に事件解決の手がかりとなる情報を持っている。 - 台所女中
事件の目撃者。事件発生時に物置に隠れて震えていた。夜明けに隣家から警察に通報した。
説明文
『老巡査』の重要シーンまとめ
この章では「老巡査」のキーとなるシーンをまとめています。
睦田巡査が巡回中、地面に落ちている金色の煙草の吸い殻を発見します。彼はこれを重要視せずに踏みつけ、そのまま忘れてしまいます。
翌朝、睦田の巡回していた別荘地で、倉川男爵家に強盗が入り、若い夫人と小間使いが絞殺されるという事件が発生します。事件の時間は睦田の巡回時間と一致しており、異常なしと報告したことで責任を追及されます。
退職を余儀なくされた彼は、縁故を頼って市外の製作工場の門衛として働くことになります。
睦田が工場の門衛として働いている際、門前にいたルンペンが金色の煙草を吸っていることに気づきます。このルンペンとの会話を通じて、一年前の事件の犯人たちに関する手がかりを得ます。
睦田の情報を基に、警視庁が犯人を逮捕します。睦田は事件解決の功労者として警視庁に呼ばれ、倉川男爵から懸賞金を受け取りますが、その場で感激のあまり気絶してしまいます。
睦田(むつだ)巡査はどこか憎めない感じが漂うんですよね。
つい頑張れといいたくなってしまいます笑
その後、幸せになってたらいいなぁ~
『老巡査』の考察
「夢野久作」が『老巡査』を通して伝えたかったメッセージを、以下のように考察しました。
- 報告の重要性
業務において、些細なことでも気づいたことがあれば報告するのって大事だなと思いました。
ただ、気にしなかった睦田巡査側の意見もすごく分かる笑
まさかとは思うでしょう。。 - 偶然と運命の皮肉
睦田巡査は自分の無能さを責めつつも、最終的に偶然の力で事件解決の英雄になります。この過程は、人生においてどんなに小さな偶然でも大きな影響を及ぼす可能性があることを示唆しているんではないでしょうか。 - 人間関係と同情の力
睦田が周囲の人々と築いていた人間関係や信頼は、最終的に彼を助けます。特に、彼が困っている時に手を差し伸べる人々が現れることから、同情や人間の温かさが人を救う力を持っていることを示しているのではないでしょうか。
記事を書きながら、バタフライ・エフェクトを思い出しました。
良かれ悪かれどんなに些細なことでも後に大きな影響を及ぼすというあれです。
夢野久作について
夢野久作(ゆめのきゅうさく)は、日本の作家で、本名を杉山直樹(すぎやまなおき)と言います。
彼の作品は、独特の怪奇・幻想的な世界観を持ちつつ、人間の心理や社会の複雑さを鋭く描写することで知られています。
夢野久作の背景
1889年に福岡県に生まれ、1952年に亡くなりました。
夢野久作は、明治から昭和にかけて活躍した作家であり、彼の作品はその時代背景を反映しています。
彼はジャーナリスト、農民運動家、そして作家として多才なキャリアを持ち、その経験が作品に多くの影響を与えました。
彼の文学は、当時の社会問題や人間の深層心理に対する関心が色濃く反映されています。
特に、現代社会の矛盾や人間の心理の奥深さを探求することが多く、作品には多層的なテーマが込められています。
夢野久作の作風
夢野久作の作品は、怪奇小説や幻想文学の分野で特に名を馳せています。
代表作である『ドグラ・マグラ』は、精神病院を舞台にした異常心理を描いた長編小説で、今もなお評価される作品です。
この作品では、夢や狂気、記憶の混乱を描写することで、人間の意識の不安定さをテーマにしています。
彼の作品には、社会の矛盾や人間関係の複雑さを批判的に描くものが多く見られます。
「老巡査」もその一つであり、平凡な巡査が偶然の出来事によって人生が変わる皮肉な展開を通じて、社会の不条理を浮き彫りにしています。
文壇においては異端視されることも多かったものの、その独自の視点と卓越した文才から、「異端の天才」として称賛されることも少なくないみたいですね。
あおなみのひとこと感想
主人公・睦田巡査の平凡な人生が、一つの偶然から劇的に変化する様子は、日常の中の些細な出来事がいかに重要かを考えさせますね。
彼の心の葛藤と社会の評価のズレは、読者に共感を与えると同時に、人生の不確実性について深く考えさせられます。
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