こんにちは!
今回は宮沢賢治の『オツベルと象』です。
人間の傲慢さに立ち向かう象たちの姿を、ぜひ耳からも楽しんでもらえたらと思います♪
あらすじ
※ネタバレを避けたい方はスキップしてください!
あるところに、オツベルというお金持ちの男がいました。彼は広大な土地を持ち、たくさんの機械を使って農作業をしていました。そんなある日、突然白い象がオツベルの作業場に現れました。この象はとても大きくて力強く、しかも美しい牙を持っていました。
オツベルは最初、象に対して恐れを抱きましたが、やがて彼を自分のものにしようと考えました。オツベルは象に時計や鎖、大きな靴などをつけて、象をどんどん働かせました。象は最初、楽しそうに仕事をしていましたが、次第にオツベルの要求がエスカレートし、象は疲れ果てていきます。
ついには、象は友達の象たちに助けを求める手紙を書きました。すると、象の仲間たちは怒り狂い、一斉にオツベルの屋敷へ押し寄せました。オツベルは必死に抵抗しようとしましたが、多くの象に囲まれてどうしようもなくなり、最終的には象たちに潰されてしまいました。
助けに来た象たちは、白い象の鎖や重りを外してやり、彼を自由にしてやりました。白い象は感謝の気持ちを示し、再び仲間たちと共に自由な生活を送ることができるようになりました。
この物語は、宮沢賢治が書いた「オツベルと象」であり、欲望や支配欲、そして自由の大切さについて考えさせられる話です。
作品の時代背景
「オツベルと象」は、宮沢賢治が1926年(大正15年)に執筆した作品です。この時代背景を考えると、以下の点が挙げられます。
- 大正時代の日本:
- 日本は大正時代(1912年〜1926年)を経て、昭和時代(1926年〜1989年)に入ったばかりの時期です。
- 大正時代は政治的・社会的変動の多い時期であり、第一次世界大戦後の経済繁栄や関東大震災(1923年)の影響が大きかったです。
2.産業革命の影響:
- 産業革命により農業や工業が機械化されていく過程にありました。オツベルの使用する稲扱い機械も、この機械化の一環を象徴しています。
- 機械化によって効率は向上したものの、労働者にとっては厳しい労働環境が生まれることも多かったです。
3.農業社会と地主制:
- 日本の農村部では地主が大きな力を持ち、農民は地主に依存して生活していました。オツベルも地主の象徴として描かれています。
- 農業労働者は地主に対して従属的な立場にあり、過酷な労働環境に置かれることも少なくありませんでした。
4.自然観と宮沢賢治の思想:
- 宮沢賢治は自然や動物に対する深い愛情を持ち、人間と自然の調和を重視していました。
- 「オツベルと象」は、人間の欲望や支配欲が自然に対してどのように影響を及ぼすか、そしてその結果としての自然の反撃を描いています。
5.社会的・倫理的なメッセージ:
- 賢治は社会的正義や労働者の権利に強い関心を持ち、その思想は彼の作品にも反映されています。
- 「オツベルと象」は、支配者と被支配者の関係、権力とその濫用、そしてそれに対する反発や復讐のテーマを通じて、社会的・倫理的なメッセージを伝えています。
これらの点を踏まえると、「オツベルと象」は、当時の社会状況や宮沢賢治の思想を反映しつつ、普遍的なテーマを扱った作品であることがわかります。
宮沢賢治について
宮沢賢治は、1896年(明治29年)に岩手県で生まれた日本の詩人・童話作家であり、その作品は独特の世界観と深いメッセージ性を持っています。
宮沢賢治の生涯
- 幼少期と自然への愛着:
- 宮沢賢治は岩手県の農村地帯で育ち、幼少期から自然に対する深い愛情と関心を持ちました。これが後の作品に大きな影響を与えています。
2.教育と宗教の影響:
- 盛岡高等農林学校(現・岩手大学)で農学を学び、農業技術や科学に精通しました。また、青年期には法華経に基づく日蓮宗に深く帰依し、その影響は彼の作品の随所に見られます。
3.農業指導と地域社会への貢献:
- 卒業後、宮沢賢治は農業学校の教師として働きながら、地域の農民に対して指導や支援を行いました。農民の生活改善や農業技術の向上に力を注ぎました。
4.詩人・童話作家としての活動:
- 賢治は短い生涯の中で多くの詩や童話を書き残しました。彼の作品は、自然、農業、宗教、社会問題など多岐にわたるテーマを扱い、特に自然と人間の関係を深く描いています。
「オツベルと象」と宮沢賢治
「オツベルと象」は、賢治の作品の中でも特に人間と自然の関係、そして権力と支配の問題を鋭く描いたものです。この物語を通じて、賢治の思想や社会観が浮き彫りになります。
- 自然と動物への愛情:
- 賢治は自然や動物に対する深い愛情を持ち、その視点から人間の行動を批判的に描きました。「オツベルと象」に登場する白象は、自由で純粋な自然の象徴です。
2.権力と支配の批判:
- オツベルは、権力を持つ者として描かれ、象を支配し利用しようとします。これは、当時の社会における地主と農民の関係や、権力者の横暴を象徴しています。
3.反逆と復讐のテーマ:
- 白象が仲間の象たちの助けを借りてオツベルに反撃する場面は、自然の力や被支配者の反乱を表しています。賢治はここで、支配に対する自然の反撃や正義の勝利を描いています。
4.社会的メッセージ:
- 宮沢賢治は社会正義や労働者の権利を強く意識していました。「オツベルと象」も、その一環として、支配者の横暴に対する批判と、自由や正義の重要性を訴えています。
宮沢賢治の影響と遺産
宮沢賢治の作品は、その独特の世界観と深いメッセージ性から、今日でも多くの人々に愛されています。彼の作品は、自然と人間の共生、社会正義、宗教的な問いなど、さまざまなテーマを通じて読者に深い感動を与え続けています。「オツベルと象」はその一例として、賢治の思想と創作の魅力を存分に感じさせる作品です。
あおなみのひとこと感想
小学校の時に国語の授業で読んだことがあるような気がしますが
こんな作品だったんだと、印象を受けました。
作品に触れながら、自分の行動が偏り過ぎてないか振り返る時間となりました♪
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