【朗読】日記帳/江戸川乱歩~臆病な恋の結末~

あおなみ

こんにちは!
今回は江戸川乱歩の『日記帳』です。

恋に臆病な語り手の弟が、なんとかその想いを伝えようと思考を重ねます。

ぜひ、結末を刮目ください。

目次

あらすじ

※ネタバレを避けたい方は飛ばしてください

これは、江戸川乱歩の短編小説「日記帳」の物語です。語り手の「私」は、弟が亡くなった後、彼の書斎で日記帳を見つけます。弟は、恋を知らずに亡くなったと思われていましたが、日記帳には、雪枝という女性の名前が何度か登場します。しかし、内容からは恋愛の痕跡は見当たりません。

ある日、弟の遺愛の手文庫から雪枝さんからの絵葉書が11枚出てきます。絵葉書の内容は恋文ではなく、病気見舞いの文面ばかりでしたが、弟の日記には10回の受信しか記されていません。日記には、「最後の通信に対して雪枝より絵葉書来る。失望。おれはあんまり臆病すぎた。今になってはもう取返しがつかぬ。ああ」という言葉が残されていました。

弟が雪枝さんへの葉書の日付に「I LOVE YOU」という暗号を隠していたことに気づいた語り手は、その最後の葉書が届いた日を境に、弟が失望し恋文を書くことをやめたと推察します。また、雪枝さんの絵葉書には切手が斜めに貼られており、これは当時、恋を示す秘密のサインでした。

弟は自分の恋心を伝えることができず、雪枝さんも自分の気持ちを弟に伝えることができなかったのです。彼らの臆病な恋は成就することなく、弟は失恋と病の痛みに耐えながらこの世を去りました。そして、語り手の「私」は、弟の死の直前に雪枝さんと婚約していた事実に思いを馳せ、複雑な心境に陥るのです。

この物語は、臆病な恋心が引き起こす悲劇を描いており、登場人物たちの切ない思いが胸に迫ります。

この作品の時代背景

この作品「日記帳」の時代背景は、江戸川乱歩が活躍した大正時代から昭和初期の日本と考えられます。この時代背景を踏まえると、以下のような特徴があります:

  1. 社会と文化
  • 日本は大正デモクラシーと呼ばれる自由主義と民主主義が高揚した時代を経験しており、西洋文化や技術の導入が進んでいました。
  • 一方で、昭和初期に入ると経済的な不安や軍国主義の台頭などが見られるようになりました。

2.恋愛観

    • 恋愛においても、西洋のロマンティシズムが影響を与えつつ、伝統的な価値観が残る複雑な時代でした。恋愛はまだプライベートなものであり、家族の意向が強く反映されることも多かったです。

    3.コミュニケーション手段

      • 手紙や葉書が主要なコミュニケーション手段であり、特に若者の間では、葉書に切手を斜めに貼るなどの秘密のメッセージが流行しました。これは、作品中でも重要な役割を果たしています。

      4.健康と医療

        • 結核などの病気がまだ多くの命を奪っていた時代です。弟の病状も、当時の医療技術の限界を反映していると考えられます。

        5.文学と探偵小説

          • 江戸川乱歩は日本の探偵小説の先駆者であり、彼の作品は当時の読者にとって新鮮で刺激的なものでした。この時代の文学は、社会の変動や人々の心理に深く根ざしたテーマを扱うことが多かったです。

          これらの要素が、作品「日記帳」の背景に色濃く反映されています。弟の繊細で内向的な性格や、暗号めいた恋文のやり取り、そして秘められた恋心の悲劇的な結末は、時代の雰囲気や社会状況を反映したものです。

          江戸川乱歩について

          江戸川乱歩は、日本の推理小説家であり、日本探偵小説の草分け的存在です。本名は平井太郎で、1894年に生まれ、1965年に没しました。乱歩は、その独特な作風と巧妙なプロットで、多くの読者を魅了しました。

          乱歩の作風は、心理描写や怪奇性、異常心理に焦点を当てたものが多く、彼の作品はしばしば幻想的で不気味な雰囲気を持っています。彼はまた、江戸川コナン・ドイルに影響を受け、自らのペンネーム「江戸川乱歩」を名乗りました。

          さて、今回の作品「日記帳」は、乱歩の特徴的な作風をよく表しています。この作品では、弟の死後、彼の秘密の日記と手紙を通じて、秘められた恋心が明らかにされます。以下に、乱歩の特徴と「日記帳」の関連性を挙げてみましょう。

          心理描写の巧みさ

          「日記帳」では、亡くなった弟の日記を通じて、弟の内向的で繊細な性格が浮き彫りにされます。乱歩は、登場人物の内面を深く掘り下げることで、読者に強い共感と感情移入を促します。この作品でも、弟の臆病さや恋心の苦悩が詳細に描かれ、読者に深い印象を与えます。

          異常心理と暗号

          乱歩の作品には、異常心理や暗号が頻繁に登場します。「日記帳」でも、弟が日付に暗号を仕込み、雪枝さんへの恋心を伝えようとするエピソードが描かれています。このような暗号や心理ゲームは、乱歩作品の大きな魅力の一つです。

          悲劇的な結末

          乱歩の作品には、しばしば悲劇的な結末が描かれます。「日記帳」でも、弟の恋が成就することなく終わる悲劇が描かれています。さらに、語り手自身が雪枝さんと婚約しているという事実が明らかになることで、物語は一層の複雑さと悲しみを増します。

          ミステリアスな雰囲気

          乱歩の作品は、そのミステリアスな雰囲気と緊張感で知られています。「日記帳」もまた、弟の日記や絵葉書を手がかりに、徐々に明らかになる秘密と謎が物語を引き立てています。

          江戸川乱歩は、その独自の作風と深い心理描写で、日本文学に大きな影響を与えました。彼の作品は、単なる推理小説の枠を超え、人間の内面や異常心理を鋭く描き出しています。「日記帳」もその一例であり、乱歩の魅力を余すところなく伝える作品となっています。

          あおなみのひとこと感想

          あおなみ

          江戸川乱歩の名前は知っていましたが、
          朗読を通して、初めて作品を読みました。

          暗号や秘密のメッセージが絡むミステリアスな展開が魅力でした♪

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