【朗読】年末の一日/芥川龍之介~師走の訪問~

あおなみ

こんにちは!
今回は、芥川龍之介の『年末の一日』を解説していきます。

年末の静寂と憂愁とが漂う作品をぜひ、耳からもどうぞ♪

目次

あらすじ

※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!

芥川龍之介の「年末の一日」は、ある年末の日の出来事を描いた短編小説です。主人公の「僕」は、雑木の生えた寂しい崖の上を歩く夢から目覚めるところから物語は始まります。目覚めた僕は、書斎で仕事を終えたばかりで、ふと時計を見るともうお昼の12時でした。

起き上がって、母や妻が家事に勤しむ姿を横目に、僕は朝の習慣をこなしていきます。新聞を読んでいると、やがて友人のK君が訪ねてきました。K君は、夏目漱石の熱心な愛読者で、以前から漱石の墓参りをしたいと言っていたのです。

僕たちは、少し外出しようということで、漱石先生のお墓参りをすることに決めました。冬の寒さの中、護国寺前行きの電車に乗り、墓地へ向かいます。道中、電車の中で起こった小さな事件や町の様子に触れながら、僕たちは目的地へと進みます。

墓地に着くと、ひっそりと静まり返った雰囲気の中、僕たちは先生のお墓を探します。しかし、なかなか見つからず、苛立ちと侘しさを感じる僕。それでも何度か道を行き来した後、ようやく墓地掃除の女性に道を教えてもらい、漱石先生のお墓にたどり着きました。

お墓は以前よりも古びて見え、冬の寒さに荒れた様子でした。K君は外套を脱ぎ、丁寧にお墓参りをしましたが、僕はなんだか心が落ち着かないままでした。お参りを終えた僕たちは、また電車に乗り、僕は途中でK君と別れて、友人を訪ねた後に動坂へと帰りました。

帰り道、墓地裏の八幡坂の下で疲れ果てた男が引く箱車を見かけた僕は、その男を手助けすることにしました。冷たい北風が吹きすさぶ中、僕は自分自身と戦うように、その車を一心に押し続けるのでした。

時代背景

「年末の一日」は、芥川龍之介が大正時代に書いた作品です。

大正時代の日本 (1912-1926)

  1. 社会の変動と近代化
    • 大正時代は、日本が急速に近代化していく時期でした。明治時代から続く西洋化の影響を受け、産業や都市の発展が進み、社会全体が変革の中にありました。

  2. 文化と知識人の活動
    • 大正時代は「大正デモクラシー」と呼ばれる民主主義運動が盛んだった時期でもありました。自由主義的な思想が広まり、文学や芸術の分野でも活発な活動が見られました。芥川龍之介もこの時期の代表的な作家の一人で、知識人や文壇の中心人物でした。

  3. 個人主義と内面の探求
    • この時代の文学は、個人の内面の探求や、現実の社会問題に対する批判的な視点が重視されました。芥川の作品にも、自身の内面や人間の心理に深く迫る描写が多く見られます。

  4. 大正末期の不安定さ
    • 大正時代の終わりには、第一次世界大戦後の不況や社会不安が広がり、経済的にも政治的にも不安定な時期でした。これが人々の心に影響を与え、文学や芸術にも反映されました。

「年末の一日」の背景

  1. 年末の風景
    • 作品には、年末特有の忙しさや慌ただしさが描かれています。特に、年末の大掃除や新年の準備といった風習が描写されています。

  2. 作家としての生活
    • 主人公の「僕」は、雑誌社に原稿を納めるために忙しい年末を過ごしています。これは、芥川自身の作家としての生活や仕事の様子を反映していると言えます。

  3. 夏目漱石の影響
    • 作品中に登場する夏目漱石の墓参りの場面は、芥川が深く尊敬していた漱石への敬意を表しています。漱石の死後、その影響を受け続けた芥川の心情が描かれています。

  4. 都市と自然の対比
    • 都市の喧騒と、墓地や自然の静寂が対比的に描かれています。これは、大正時代の急速な都市化と、それに対する人々の心の中の葛藤を表しているとも解釈できます。

結論

「年末の一日」は、大正時代の日本の社会背景や文化的風潮、作家としての芥川自身の経験と深く結びついた作品です。この時代の特有の空気や人々の心情が、作品全体に反映されています。

芥川龍之介について

芥川龍之介(1892-1927)は、日本の近代文学を代表する作家の一人であり、彼の作品はその卓越した短編小説の技巧と深い心理描写で広く知られています。「年末の一日」は、彼の特有のスタイルとテーマがよく現れている作品の一つです。

芥川龍之介の生涯と作品

  1. 早年期と教育
    • 芥川龍之介は、1892年に東京で生まれました。幼少期に母親が精神病を患い、叔母に育てられるという経験が、彼の感受性と文学的素質を育む一因となりました。東京帝国大学(現在の東京大学)で英文学を学び、その間に文学活動を開始しました。

  2. デビューと作家としての活躍
    • 芥川の文壇デビューは、1916年に発表した「羅生門」と「鼻」によって大きな注目を集めました。特に「鼻」は、夏目漱石が絶賛し、彼の後継者として期待を寄せられました。彼はその後も「地獄変」「藪の中」など、多くの短編小説を発表し、短編小説の名手として評価を確立しました。

  3. 作風とテーマ
    • 芥川の作品は、人間の内面の探求や道徳的ジレンマをテーマにしたものが多く、細やかな心理描写と象徴的な表現が特徴です。彼の作品には、しばしば歴史や伝説を題材にしたものがあり、それを通して普遍的な人間の本質を描き出しています。

「年末の一日」と芥川の人生

  1. 年末の情景と心理描写
    • 「年末の一日」は、芥川が大正時代の年末の一日を舞台に、主人公の内面の動きや社会の風景を描いた作品です。物語は、主人公が夢から目覚め、年末の忙しさの中で日常生活を送る様子を描いています。この作品には、芥川の繊細な観察力と心理描写がよく表れています。

  2. 夏目漱石への敬意
    • 作品中には、夏目漱石の墓参りが描かれています。漱石は芥川にとって恩師であり、彼の文学に多大な影響を与えました。漱石の死後も、その影響は芥川の作品に色濃く残り、「年末の一日」にもその一端が見られます。

  3. 時代背景と社会風刺
    • 芥川は大正時代の急速な近代化とそれに伴う社会の変化を鋭く見つめていました。「年末の一日」に描かれる都市の喧騒と墓地の静寂の対比は、彼が感じた社会の喧噪と人々の内面的な孤独を象徴しています。

  4. 内面の苦悩と作家としての疲弊
    • 芥川は常に自身の内面と向き合い、その中で生まれる不安や焦燥を作品に反映させました。「年末の一日」の主人公が感じる倦怠感や疲労感は、芥川自身が作家としての活動の中で感じたものと重なります。

まとめ

芥川龍之介は、その短い生涯の中で、多くの優れた短編小説を残しました。「年末の一日」は、彼の細やかな心理描写と社会観察が光る作品であり、芥川自身の人生や時代背景と密接に結びついています。この作品を通して、芥川の文学世界と彼の生きた時代を垣間見ることができます。

あおなみのひとこと感想

あおなみ

年末の慌ただしさと静寂を織り交ぜ、芥川の繊細な心理描写が際立つ作品でしたね。

個人的にこの作品の良さをもっと理解するにはもう少し人生経験が必要かもと感じました。

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