「お客様、塩をもみ込んでください」―この一言で全てが変わる瞬間、あなたは気づいているでしょうか?
宮沢賢治の「注文の多い料理店」は、単なる怖い童話ではありません。
消費社会、環境破壊、格差問題…現代の私たちが直面する課題を100年前に見抜いていた賢治の洞察力に、きっと驚くはずです。
\耳から作品を楽しみたい方は、全編を以下YouTubeで朗読しております/
- 『注文の多い料理店』の物語概要とあらすじ
- 『注文の多い料理店』のメッセージや考察
- 『宮沢賢治』について
『注文の多い料理店』のあらすじと登場人物について

あらすじ
※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!
二人の若い紳士が、イギリス風の軍装で鉄砲を担ぎ、白熊のような犬を連れて山奥に狩猟に出かけました。
しかし、山は静寂で獲物は一匹もおらず、連れていた犬も山の恐ろしさに気絶して死んでしまいます。
道に迷った二人は空腹と寒さに困り果てていると、突然立派な西洋料理店「山猫軒」を発見します。
店の入り口には「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」と書かれており、二人は大喜びで店内に入っていきます。
ところが、進むにつれて次々と奇妙な「注文」が壁に書かれているのです。
「髪をきちんとして靴の泥を落としてください」「鉄砲を置いてください」「帽子と外套と靴を取ってください」「ネクタイピンや眼鏡など金物類を置いてください」「クリームを顔や手足に塗ってください」「香水を頭に振りかけてください」そして最後に「体中に塩をよくもみ込んでください」。
ここでようやく二人は気づきます。「注文の多い料理店」とは、客に料理を出す店ではなく、客を料理にして食べる店だったのです。
恐怖に震える二人の前に現れた最後の扉には「さあさあおなかにおはいりください」と書かれ、鍵穴からは青い眼玉がのぞいています。
絶体絶命の瞬間、突然死んだはずの犬が二匹現れて扉を破り、山猫たちを追い払います。二人は草原で目を覚ますと、専門の猟師に助けられ、無事に東京へ帰ることができました。
しかし、恐怖で紙くずのようになった二人の顔は、東京に帰ってもお湯に入っても、もう元通りにはなりませんでした。
主な登場人物
- 二人の若い紳士
イギリス風の軍装で狩猟に出かけた都市部の裕福な男性たち。
傲慢で無神経な性格で、動物を殺すことを娯楽として楽しんでいる。
山猫軒での恐怖体験を通して、自分たちの愚かさと浅はかさを思い知らされる。 - 山猫(料理店の主人たち)
人間を食べようとする化け物。直接姿は現さず、巧妙な罠で人間を料理にしようと企む。
二人の紳士を騙して店内に誘い込み、調理の準備をさせようとする狡猾な存在。 - 白熊のような犬
二人の紳士が連れていた猟犬。
山の恐ろしさに気絶して死んでしまうが、最後に蘇って二人を救う。忠実で勇敢な動物として描かれている。 - 専門の猟師
二人を案内していたが途中で行方不明になり、最後に現れて二人を救助する。
簔帽子をかぶった地元の人で、山を知り尽くした頼もしい存在。
『注文の多い料理店』の重要シーンまとめ

この章では「注文の多い料理店」のキーとなるシーンをまとめています。
道に迷い、空腹と寒さに苦しむ二人の前に突然現れる立派な西洋料理店。「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」の看板に大喜びする二人の姿は、後の恐怖との対比が効いている。この場面から物語の不気味さが始まる。
「体中に塩をよくもみ込んでください」という最後の注文で、ついに二人が騙されていたことに気づく場面。「注文の多い料理店」の本当の意味を理解した瞬間の恐怖と絶望が生々しく描かれている。読者も同じタイミングで真実を知る巧妙な構成。
絶体絶命の瞬間、死んだはずの犬が扉を破って現れ、山猫たちを追い払う劇的な場面。忠実な動物が主人を救うという感動的な展開でありながら、同時に二人の身勝手さも浮き彫りにする皮肉な救出劇。

この三つのシーンが巧妙に組み合わさることで、単純な恐怖譚を超えた深い物語になっています。
『注文の多い料理店』の考察や気づき


「宮沢賢治」が『注文の多い料理店』を通して伝えたかったメッセージを、以下のように考察しました。
- 人間の傲慢さへの警告
都市部の裕福な紳士たちは、自然や動物を自分たちの娯楽の対象としか見ていません。「鹿の黄色な横っ腹に二三発お見舞いしたら痛快だろう」という発言からも、生命を軽視する傲慢な態度が見て取れます。賢治は、このような人間の身勝手さが最終的に自分たちに跳ね返ってくることを示しています。 - 都市と自然の対立構造
物語は都市文明と自然の世界の対立を描いています。西洋かぶれの紳士たちは自然に対して無知で無力な存在として描かれ、最後は自然の力(山猫)によって窮地に追い込まれます。賢治は近代化が進む中で、自然への畏敬の念を失った現代人への警鐘を鳴らしているのです。 - 消費社会への皮肉
「料理店」という設定は、消費社会への鋭い皮肉でもあります。客だと思っていた者が実は商品だったという逆転は、資本主義社会において人間が商品化される現実を暗示しています。賢治は、人間が消費者であると同時に消費される存在でもあることを示唆しているのです。



これらの考察から、賢治がいかに現代社会の問題を先見的に捉えていたかがわかります。
宮沢賢治について
宮沢賢治(1896-1933)は岩手県出身の詩人・童話作家で、「注文の多い料理店」は彼の代表作の一つです。賢治は教師として働きながら創作活動を続け、農業指導にも熱心に取り組んでいました。
この作品には賢治の思想が色濃く反映されています。彼は法華経の信仰に基づく慈悲の精神を持ち、すべての生命を平等に尊重していました。「注文の多い料理店」で動物を娯楽の対象として殺そうとする紳士たちを批判的に描いているのも、この思想の表れです。
また、賢治は農村の貧困問題に深く関心を持っており、都市部の富裕層への批判的な視点も作品に込めています。西洋かぶれの紳士たちが愚かな存在として描かれているのは、表面的な西洋文明への憧れではなく、真の文明とは何かを問いかけているのです。
賢治自身も自然を深く愛し、科学的な知識を持ちながら自然との調和を重視していました。この作品で自然の恐ろしさと神秘性を描いているのも、現代人が失いつつある自然への畏敬の念を取り戻してほしいという願いからでしょう。
『注文の多い料理店』のあおなみのひとこと感想



一見すると子供向けの怖い話のように見えますが、読み返すたびに新たな発見がある奥深い作品です。賢治の鋭い社会批判と人間洞察が巧妙に童話の形に込められており、現代でも全く色褪せない普遍的なメッセージを持っています。特に消費社会の問題は今まさに私たちが直面している課題であり、賢治の先見性に驚かされます。
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