【朗読】煙管/芥川龍之介~煙管に映る人間模様~

あおなみ

こんにちは!
今回は芥川龍之介の『煙管』という作品です。

この作品は、権威と虚栄心、そしてそれらが他人にどう見られるか、というのがテーマかなと思いました。

耳から楽しみたい方は、以下YouTubeからどうぞ♪

目次

あらすじ

加賀藩の藩主、前田斉広は、江戸城に登城する際に、必ず金無垢の煙管を持参していました。

この煙管は住吉屋七兵衛の手によるもので、剣梅鉢の紋が施された豪華なものです。

斉広は、この煙管を持つことによって、自身の権威と加賀藩の富を誇示していました。

ある日、御数寄屋坊主の河内山宗俊が、斉広に煙管を拝領したいと申し出ます。

斉広はこの要求を受け入れ、宗俊に煙管を与えます。

この事件を契機に、他の坊主たちも次々と銀の煙管を欲しがるようになります。

しかし、斉広の家臣たちは、銀の煙管を次々に与えることが藩の財政に悪影響を及ぼすことを懸念し、煙管の素材を真鍮に変更することを提案します。

斉広はこの提案を受け入れ、以後は真鍮の煙管を用いるようになります。

ところが、真鍮の煙管を見た坊主たちは、斉広が持つ煙管が本物の金ではないと信じ込み、煙管をねだることをやめてしまいます。

斉広は再び金無垢の煙管を用いるようになりますが、坊主たちはもう誰もそれを欲しがらなくなります。

結局、斉広は自分の権威と富の象徴であった煙管に対する満足感を失い、金無垢の煙管の使用をやめ、後世の前田家でも真鍮の煙管を使うようになったという話です。

作品の時代背景

『煙管』の時代背景は、江戸時代末期から明治時代初期の日本です。

江戸時代末期(19世紀前半)

  1. 参勤交代制度
  • 江戸時代の重要な政治制度で、全国の大名が一定期間江戸に住み、その後自領に戻るという交代を義務付けられました。前田斉広もこの制度に従って江戸城に登城しています。

2.藩の富と権力

  • 加賀藩(現在の石川県と富山県の一部を含む)は、特に富裕な藩の一つとして知られていました。前田家は「加州百万石」と称され、膨大な石高を誇っていました。この作品でも前田斉広が富の象徴として金無垢の煙管を持つことが描かれています。

3.家臣と藩の経済

  • 大名や藩士たちが豪華な装飾品や高価な持ち物を誇示する一方で、藩の財政状況に対する配慮も必要でした。斉広の家臣たちは、藩の財政に悪影響を及ぼすことを懸念し、銀や真鍮の煙管に変更することを提案します。

明治時代初期(19世紀後半)

  1. 社会の変革
  • 明治維新(1868年)以降、日本は封建制度を廃止し、西洋化と近代化を進めました。この過程で、大名制度も廃止され、藩は県に置き換えられました。作品の具体的な年代は明示されていませんが、この過渡期にあることが示唆されています。

2.伝統と新しい価値観

  • 明治時代初期は、伝統的な価値観と新しい西洋の価値観が混在する時代でした。前田斉広のような旧来の大名が持っていた権威や富の象徴が、時代の変化とともにどのように変わっていくかが作品のテーマの一部です。

まとめ

『煙管』は、江戸時代末期から明治時代初期にかけての日本社会を背景に、権威と虚栄心、そしてそれが他者にどう見られるかというテーマを描いています。作品の中で描かれる前田斉広の行動や家臣たちの反応は、この時代の日本の政治制度や社会状況を反映しています。

芥川龍之介について

芥川龍之介(1892年 – 1927年)は、日本の代表的な作家の一人で、その作品は明治から大正時代にかけての日本文学を代表するものとなっています。彼の作品は、短編小説を中心に多岐にわたるジャンルとテーマを扱い、鋭い観察眼と繊細な表現力で知られています。

芥川龍之介と『煙管』

1. 芥川龍之介の背景と作風:

  • 芥川龍之介は、東京帝国大学で英文学を学び、西洋文学や日本の古典文学から多くの影響を受けました。彼の作品は、風刺、心理描写、そして人間の本質に対する鋭い洞察が特徴です。
  • 彼の短編小説は、日常の中に潜む人間の心理や社会の矛盾を巧みに描き出しています。これにより、読者は一見平凡な出来事の中に隠された深い意味や普遍的なテーマを感じ取ることができます。

2. 『煙管』のテーマと芥川の視点:

  • 『煙管』では、江戸時代の大名である前田斉広の権威と虚栄心をテーマにしています。この物語は、斉広が持つ豪華な金無垢の煙管を通じて、自身の権力や富を誇示する姿を描いています。
  • 芥川は、この物語を通じて、権力者の虚栄心や、それを取り巻く人々の反応を風刺的に描いています。特に、煙管の素材が金から銀、そして真鍮へと変わる過程で、斉広と彼を取り巻く人々の態度の変化が、権力と富に対する人間の心理を浮き彫りにしています。

3. 社会風刺と人間心理の洞察:

  • 芥川の多くの作品と同様に、『煙管』も社会風刺の要素が強く、人間の本質を鋭く描いています。斉広の虚栄心や家臣たちの反応、坊主たちの態度など、登場人物それぞれの行動が、当時の社会の価値観や人間の弱さを反映しています。
  • この物語は、特定の時代背景を持ちながらも、普遍的な人間の心理を描いており、現代の読者にも共感を呼び起こします。

4. 芥川龍之介の影響:

  • 芥川の作品は、日本文学において重要な位置を占め、後の作家たちに多大な影響を与えました。彼の鋭い観察眼と心理描写の巧みさは、多くの読者や批評家に評価されています。
  • 『煙管』は、その中でも特に、権力と虚栄心、人間の本質に対する洞察を通じて、芥川の文学的な力量を示しています。

芥川龍之介の作品は、時代を超えて読まれ続けており、その普遍的なテーマと鋭い洞察力は、今日でも多くの読者に感動を与え続けています。『煙管』もまた、その一つとして、芥川の文学世界を理解する上で重要な作品です。

あおなみのひとこと所感

あおなみ

作品のテーマとは全く関係ないけど、
剣梅鉢
けんうめばち

もん
ぢらしをちらした煙管ってどんな感じなのかな?って
読みながらイメージを膨らませてました笑

僕の所感は独特かと思いますが、色々想像しながら読むって面白いです笑

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