街角の鳥屋で出会った、小さなかごに閉じ込められた一羽の鳥。
その鳥の尾は、狭いかごに合わせるために無情にも切り落とされていました。
やがて春が訪れ、空を自由に舞う鳥たちを見上げる姿に、主人公は深い罪悪感を抱きます。
「自由とは何か」を問いかける小川未明の名作が、現代を生きる私たちの心に鋭く突き刺さる理由とは?
傷ついた翼でも空を目指す鳥の姿から、真の自由について考えてみませんか。
\耳から作品を楽しみたい方は、全編を以下YouTubeで朗読しております/
- 『自由』の物語概要とあらすじ
- 『自由』のメッセージや考察
- 『小川未明』について
『自由』のあらすじと登場人物について

あらすじ
※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!
街の鳥屋で、小さな鳥かごに入れられた一羽の鳥を見つけた主人公。その鳥は小鳩ほどの大きさで、黄色いくちばしと黒い瞳を持つ愛らしい姿をしていたが、狭いかごの中で窮屈そうにしていた。主人公は鳥屋の女主人から、かごが小さすぎることを聞きながらも、その鳥を購入して家に連れ帰る。
家でより大きなかごに移してやった主人公は、鳥の尾が短く切られていることを発見する。小さなかごに入れるために、人間が勝手に切ったのだと気づき、その残忍な行為に不快感を覚える。やがて、その鳥が「いかるが」という名前で、本来は大空を自由に飛び回る翼の強い鳥だと知る。
寒い冬が過ぎて春が訪れると、空を渡る鳥たちの姿を見上げるいかるがの様子に、主人公は深い罪悪感を感じる。鳥は竹骨の隙間から首を曲げて空を仰ぎ、飛ぶ鳥の影を見送っていた。その姿はまるで「自分もかつては自由に大空を飛んだものだが…」と語りかけているかのようだった。
ついに主人公は決心し、かごの戸を開いて鳥を自由にしてやる。しかし、切られた尾と擦り切れた羽根のため、いかるがは昔のように敏捷に飛ぶことができない。庭の木立に止まろうとして地面に落ちてしまうが、それでも自由への憧れに突き動かされ、必死に羽ばたきながら空へ舞い上がり、傷ついた羽根で空気を刻みながら高い木を目指して飛んでいく。
その姿を見た主人公は、長年牢獄にいた囚徒が放免された時の心境を想像し、鉄窓の下で「自由を与えよ。しからざれば、死を与えよ!」と叫ぶ声を聞いたような気持ちになる。しかし、自由になったのはたった一羽だけで、世の中にはまだ多くの鳥がかごの中にいること、そして人間同士でも自由を束縛し合っていることに思いを馳せ、深い憂鬱に包まれるのだった。
主な登場人物
- 主人公(語り手)
街で偶然いかるがを見つけ、購入して飼う男性。鳥の自由への憧れを理解し、最終的に空に放してやる優しい心の持ち主。子供時代に鳥を捕まえた経験を持つ。 - いかるが
鳩の仲間で、本来は大空を自由に飛び回る翼の強い鳥。狭いかごのために尾を切られ、羽根も擦り切れているが、最後は自由への強い憧れによって空へ舞い上がる。 - 鳥屋の女主人
いかるがを売る店の女性。かごが小さすぎることを認識しながらも、商売のために改善しない現実的な人物。
『自由』の重要シーンまとめ

この章では「自由」のキーとなるシーンをまとめています。
主人公が家でいかるがを観察していると、本来長いはずの尾が短く切られていることを発見する。小さなかごに入れるために人間が勝手に切ったのだと悟り、その残忍な行為に深い不快感を覚える場面。
春になり、様々な鳥が空を渡る季節。かごの中のいかるがが竹骨の隙間から首を曲げて空を仰ぎ、飛ぶ鳥の影を見送る姿。まるで「自分もかつては自由に大空を飛んだものだが…」と語りかけているかのような切ない瞬間。
主人公がかごの戸を開き、いかるがを自由にしてやる場面。傷ついた羽根で思うように飛べないながらも、自由への憧れに突き動かされて必死に羽ばたき、空へ舞い上がって高い木を目指して飛んでいく感動的な瞬間。

この作品の重要シーンは、いずれも「自由」への憧れと、それを奪われた存在の悲しみを描いており、読者の心に深い印象を残します。
『自由』の考察や気づき


「小川未明」が『自由』を通して伝えたかったメッセージを、以下のように考察しました。
- 真の自由とは何か
作者は、物理的な束縛からの解放だけでなく、精神的な自由の重要性を説いている。いかるがが傷ついた身体でも空を目指す姿は、自由への不屈の意志を象徴しており、人間もまた様々な制約の中で真の自由を求め続けるべき存在だと訴えている。 - 人間の身勝手さへの批判
小さなかごに入れるために鳥の尾を切るという行為は、人間の都合を優先し、他者の本質を無視する身勝手さの象徴である。作者はこうした人間中心主義的な考え方を厳しく批判し、すべての生き物への配慮の必要性を説いている。 - 自然と人間の関係性
本来自由に空を飛ぶべき鳥を人工的な環境に閉じ込めることの不自然さを通じて、人間と自然の望ましい関係性について問いかけている。自然の摂理を尊重し、共生していく重要性を訴えている。



これらの考察を通じて、小川未明は単なる動物愛護の話ではなく、人間社会の根本的な問題について深く考えさせる作品を創り上げています。
小川未明について
小川未明(1882-1961)は、「日本児童文学の父」と呼ばれる作家で、多くの童話や児童文学作品を残しました。この「自由」という作品は1929年に発表され、未明の代表作の一つとして知られています。
未明の作品の特徴は、単純な勧善懲悪の物語ではなく、社会の矛盾や人間の心の奥深くにある問題を、子どもにも理解できる形で描いていることです。「自由」においても、鳥かごの中の小鳥という身近な題材を通じて、自由の価値や人間の身勝手さ、社会の不条理について深く考えさせる構成となっています。
また、未明は大正から昭和にかけて活躍した作家で、社会主義思想の影響も受けており、弱者への共感と社会改革への意識が作品に反映されています。「自由」でも、最後に主人公が牢獄の囚徒を連想する場面があり、政治的・社会的な自由への関心が窺えます。
未明の文体は詩的で美しく、読者の心に深い余韻を残す特徴があります。この作品でも、春の空を見上げる鳥の描写や、自由への飛翔の場面などで、その美しい文章力が発揮されています。
『自由』のあおなみのひとこと感想



この作品は、身近な鳥かごの小鳥を通じて「自由」の本質について深く考えさせられる名作です。特に、尾を切られた鳥が傷ついた身体でも必死に空を目指す場面は、自由への不屈の意志を感じさせて心を打ちます。現代社会にも通じる普遍的なテーマを含んでおり、読み返すたびに新しい発見があります。
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