「死者は何を思い、私たちに何を伝えようとしているのか――」
小泉八雲が描いた『葬られたる秘密』は、美しくも切ない日本怪談の傑作です。
若くして亡くなったお園の霊が家族に何を訴えかけようとしていたのか。
その謎を解き明かすため、老僧の力を借りた家族の奮闘と、秘められた一通の手紙に込められた秘密が明らかになります。
恐怖を超えて心を揺さぶる、過去と向き合う勇気と解放の物語をぜひご堪能ください。
この記事では、物語の概要や考察、重要なシーンを分かりやすく解説します!
\耳から作品を楽しみたい方は、全編を以下YouTubeで朗読しております/
- 『葬られたる秘密』の物語概要とあらすじ
- 『葬られたる秘密』のメッセージや考察
- 『小泉八雲』について
『葬られたる秘密』のあらすじと登場人物について

あらすじ
※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!
昔、丹波の国に稲村屋源助という裕福な商人が住んでおり、彼にはお園という美しく聡明な一人娘がいました。
お園は地元の教育だけでは不十分だと感じた源助によって、信頼できる従者と共に京都へ送られ、都の婦人達が学ぶ上品な芸事を学びました。
教育を受けた後、お園は父の知人である商人、ながらやに嫁ぎ、彼との間に一人の息子をもうけて幸せに暮らしましたが、結婚後四年で病に倒れ亡くなります。
お園の死後、その晩息子がお母さんが帰ってきて二階の部屋にいたと言いましたが、お園は何も話さずに微笑んだだけでした。
家族が二階の部屋を調べると、驚くべきことに亡きお園の姿が、その部屋にある位牌の前の小さな灯りの光で見えたのです。
お園の姿は箪笥の前に立ち、その箪笥には彼女の飾り道具や衣類がまだ入っていましたが、腰から下は徐々に透明になり見えなくなっていました。
家族はこれに恐怖し、お園の持ち物をすべて寺に納めることにしましたが、お園の霊はそれでも毎晩戻ってきました。
その後、お園の夫の母が事情を知る老僧、大玄和尚に相談し、和尚はその夜お園の部屋で番をしました。
お園の姿が再び現れると、和尚はお園に話しかけ、何が彼女をここに留めているのかを尋ねました。
彼は箪笥の引き出しを一つずつ調べ、最終的に最下段の抽斗の裏側に隠された一通の手紙を発見しました。
この手紙がお園を縛り付けていたものでした。
和尚はその手紙を焼き、お園の魂が安らかになるよう祈りました。
その後、お園の姿は二度と現れませんでした。
この手紙の内容は和尚だけが知っており、その秘密も彼と共に葬られました。
主な登場人物
- 稲村屋源助
裕福な商人で、お園の父親。娘に最良の教育を受けさせるために京都に送ります。 - お園
源助の一人娘で、非常に聡明で美しい女性。若くして亡くなり、その霊が物語の中心となります。 - ながらや
お園の夫であり、商人。お園との間に一人の息子をもうけます。 - お園の息子
お園とながらやの子で、母の死後に母の霊を見たと家族に告げます。 - お園の夫の母
ながらやの母親で、お園の霊に対処するために大玄和尚に相談を持ちかけます。 - 大玄和尚
禅寺の住職で学識があり、お園の霊が現れる理由を解明し、解決に導く重要な役割を果たします。
『葬られたる秘密』の重要シーンまとめ

この章では「葬られたる秘密」のキーとなるシーンをまとめています。
物語冒頭でお園が若くして亡くなり、その夜に息子がお園の霊を見たと報告する
家族がお園の霊が現れると聞き、実際に彼女の霊を箪笥の前に立っている姿を目撃する
家族がお園の霊が箪笥に執着していると考え、その中の物をすべて寺に納める決断
和尚がお園の部屋に留まり、夜を通して霊と対話を試みる
和尚が箪笥の引き出しを一つずつ開け、最終的に隠された手紙を見つけ出す
和尚が手紙を焼き捨て、お園の霊が笑顔で消え去るシーンです。これにより、お園の魂がついに安息を得ることができ、家族も安堵します。

家族とお園の霊との間の葛藤と解決を描いており、物語の感情的な深みとスリルを味わいますね(^^)
『葬られたる秘密』の考察や気づき


「小泉八雲」が『葬られたる秘密』を通して伝えたかったメッセージを、以下のように考察しました。
- 執着と解放の重要性
お園の霊が現れたのは、彼女が生前に抱えていた感情や執着が未解決だったためです。
この物語は、人間の執着や未解決の問題が死後の世界にも影響を及ぼすという東洋的な価値観を反映しています。
同時に、それを解放することの重要性を強調しており、手紙を焼却することでお園の魂が安息を得たという結末は、執着を手放すことで心が解放されることを示唆しているのではないでしょうか。 - 過去に向き合い、解決する勇気
隠している秘密や過去のトラウマが、自分や周囲に悪影響を及ぼすことがあります。
この物語のように、適切なタイミングでそれに向き合い、解決することが大切なのではないでしょうか。
たとえば、対立や不安を放置せず、適切な方法で問題を解決する姿勢を持つことが重要かと思いました。 - 家族や周囲の支えを大切にする
お園の家族が彼女の霊の問題を解決しようと協力し合ったように、家族や親しい人との絆は、困難を乗り越えるための大きな力になります。
日常生活では、家族や友人と良好な関係を築き、問題が生じたときに支え合えるような信頼関係を大切にしていこうと思いました。



『葬られたる秘密』から学んだことは、過去や感情と向き合い、手放すことで得られる解放感と心の平安の大切さです。
そして、家族や周囲との支え合い、他者への敬意、日常的な精神的な整理が、より良い生活を築く基盤となるのではないでしょうか。
小泉八雲について
小泉八雲(Lafcadio Hearn, 1850-1904)は、ギリシャ生まれの作家で、後にアイルランド、アメリカを経て日本に移住しました。彼は日本人女性(小泉セツ)と結婚し、「小泉」の姓を名乗りました。
彼は日本に深く魅了され、特に日本の民話や怪談、伝統文化に強い関心を持ちました。
明治時代の日本における伝統的な価値観や習慣を記録し、それを西洋に紹介する役割を果たします。
彼の作品は、人間の心の内面、霊的な世界、そして日本の独特な文化的背景を深く掘り下げたものが多いです。
小泉八雲は、日本の怪談や霊的な物語を収集し、自らの物語として再解釈しました。
この作品も、日本文化に根差した「死者への敬意」「供養の重要性」といった価値観を描いており、八雲がいかに日本文化に共感していたかがわかります。
八雲は東洋的な霊的感性と西洋的な物語手法を融合させる作家でした。
この作品では、具体的で臨場感のある描写や心理的な描写を通じて、霊の存在をリアルに感じさせるようにしています。
これは西洋のロマン主義文学の影響を受けていると言えます。
彼の怪談には単なる怖さだけでなく、人間の心の葛藤や執着、悩みが中心に据えられています。
この作品では、お園が生前の手紙に執着する理由が明らかにされないまま、霊的な救済が描かれますが、それによって読者に「執着」や「秘密」について考えさせる余韻を残しています。
八雲は人間の感情や精神に深く関心を持っており、愛、執着、救済といった普遍的なテーマを物語に織り込んでいます。
この作品でも、亡きお園が自分の物や過去に縛られる姿を通じて、人間の根源的な執着や未練を描いています。
『葬られたる秘密』のあおなみのひとこと感想



お園の霊が語らずとも、彼女の想いが静かに伝わる描写は切なく、和やかな禅的解決が心を和ませますね。
恐怖だけでなく深い余韻を残す、美しい日本怪談の一例でした(^^)
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