【朗読】嘘/太宰治~雪に隠された真実~

あおなみ

こんにちは!
今回は太宰治の『嘘』という作品です。

戦後の混乱期における人間の本性と社会の偽善を鋭く描かれています♪

“女の嘘は許すのが男だ”って足技が得意なコックさんが言ってました。

目次

あらすじ

※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!

“戦争が終わった後の日本で、みんなが何かしらの主義や思想を掲げて騒いでいるけれども、私はそんなものは全く信用できない”

という気持ちを友人に吐露するところから始まります。戦争から戻ったばかりの私は、津軽の生家で鬱々と過ごしていました。

ある日、警察署長が訪ねてきて、困り顔で脱走兵の捜索を依頼されます。その脱走兵というのが、私の親戚の圭吾で、彼は部隊に送られたはずが、その後行方不明になっていたのです。署長の話では、この大雪の中で、圭吾は間違いなく家に戻ってくるだろうとのこと。私にその嫁さんに事情を話して、圭吾が戻ってきたら知らせるように頼んで欲しいというのです。

そこで私は吹雪の中を圭吾の家に向かい、嫁さんに事の次第を話しました。嫁さんは冷静に話を聞き、圭吾が戻ったら知らせると約束してくれました。

しかし、その夜、馬小屋から音がし、署長が叫び声をあげます。なんと、圭吾は既に二日前から家に戻っており、嫁さんの助けで馬小屋の屋根裏に隠れていたのです。署長が圭吾を見つけたことで、全てが明るみに出ました。嫁さんの平然とした態度に驚かされながらも、圭吾は無事に署長の手で青森に送り返され、何事もなく勤務を終えました。

圭吾は終戦後に無事に戻り、夫婦仲良く暮らしていますが、私はあの嫁さんの嘘の巧妙さに呆れてしまい、それ以来、圭吾の家にはあまり行かなくなりました。女の嘘の凄まじさを実感し、やはり信用できないと思ったのでした。

作品の時代背景

この作品の時代背景は、第二次世界大戦直後の日本です。この時期の日本は、戦争によって大きな打撃を受け、社会全体が混乱と不安の中にありました。以下に、具体的な時代背景をまとめます。

戦後の日本

  • 戦争の終結: 第二次世界大戦は1945年に終わり、日本は敗戦国となりました。戦争が終わった後、日本はアメリカを中心とする連合国軍の占領下に置かれました。

  • 社会の混乱: 戦争によって多くの都市が破壊され、経済は疲弊し、多くの人々が生活に困窮していました。食糧不足や物資の欠乏が深刻で、黒市(闇市)が横行しました。

  • 復興への道: 戦後の日本は、復興と再建のために努力を続けていましたが、その道のりは非常に険しいものでした。人々は新しい生活を模索し、旧来の価値観や社会体制が大きく変わり始めていました。

  • 人々の心情: 戦争による悲惨な経験は、人々の心に深い傷を残しました。兵士たちは戦地から戻り、戦争のトラウマと向き合いながら日常生活に戻ることを余儀なくされました。また、家族や地域社会も戦争によって大きな影響を受けていました。

作品内の具体的な描写

  • 雪の被害: 物語の中では、数十年ぶりの大雪が描かれています。大雪によって交通が麻痺し、町全体が孤立状態に陥ります。これは、戦後の混乱と重なるように描かれています。

  • 徴兵と脱走: 圭吾の物語は、戦時中の徴兵制度と、その中での脱走兵の問題を扱っています。圭吾が部隊に送られたものの逃げ出し、家に戻ってきたという設定は、戦争による個人の葛藤や絶望を象徴しています。

  • 社会の監視と制約: 警察署長が圭吾の捜索を依頼する場面からもわかるように、社会はまだ戦争の影響下にあり、厳しい監視体制が敷かれていました。人々はその中で生き抜かなければならなかったのです。

このように、作品は戦後の混乱期における人々の生活と心情を背景にしており、その中での個人の苦悩や葛藤を描いています。

太宰治について

太宰治(1909-1948)は、昭和時代の日本を代表する作家の一人です。本名は津島修治で、青森県北津軽郡金木町(現在の五所川原市)に生まれました。太宰治の作品は、彼自身の波乱万丈な人生と深く結びついており、彼の作風には自己破壊的な要素や深い自己反省が色濃く表れています。

太宰治の生涯と作品

  • 家庭環境と教育: 太宰は裕福な地主の家庭に生まれましたが、幼少期から家庭内で孤独を感じていました。東京帝国大学(現在の東京大学)に進学するも、中途で退学しています。

  • 執筆活動の開始: 彼は1930年代から本格的に執筆活動を開始し、文壇に登場しました。彼の作品は初期から注目を集め、「晩年」や「斜陽」といった作品でその名を広めました。

  • 私生活の混乱: 太宰の私生活は非常に波乱に満ちており、自殺未遂を繰り返すなど、精神的に不安定な時期が多かったです。彼の作品には、このような自己破壊的な傾向が色濃く反映されています。

  • 「人間失格」: 太宰治の代表作の一つで、自らの経験を基にした半自伝的な作品です。この作品は彼の内面の苦悩と葛藤を深く掘り下げています。

  • 「嘘」: 今回取り上げた「嘘」は、太宰治が戦後の日本社会に対する冷徹な目線を持ちながら、人間の本性や社会の偽善を描いています。

「嘘」と太宰治の共通点

  • 戦後の混乱: 「嘘」は戦後の混乱期を背景にしていますが、太宰治自身もこの時期に多くの作品を発表しています。彼の作品は、戦争の影響を受けた人々の苦悩や絶望を描くことが多いです。

  • 人間の本性: 太宰治の作品には、人間の弱さや愚かさを描いたものが多く、「嘘」でも人間の欺瞞や嘘をテーマにしています。太宰治自身も、人間の本性や社会の偽善に対する鋭い洞察を持っていました。

  • 自己反省と自己破壊: 「嘘」の中で登場する人物たちの行動や心情は、太宰治自身の内面の葛藤や自己反省を反映しているように見えます。特に、嘘をつくことや自己を欺くことに対する批判的な視点は、太宰治の作品全般に共通しています。

太宰治の作品は、彼の複雑な内面世界と鋭い社会批判を映し出しています。戦後の混乱期における人間の姿を描いた「嘘」は、その一例として、太宰治の作家としての視点やテーマをよく表していると言えるでしょう。

あおなみのひとこと感想

あおなみ

嫁さんの冷静さには驚きですよね。
でも当時の人々はそれだけ生きるのに、必死だと想像します。

こうやって平和に自己実現のために動けることってすごく幸せなことなのではないか…と
大それたことを言ってみた笑

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