【朗読】快走/岡本かの子~自由へのランニング~

あおなみ

こんにちは!
今回は岡本かの子の『快走』です。

自由を求める彼女の夜の冒険をお楽しみください^^

目次

あらすじ

※ネタバレを避けたい方はスキップしましょう!

主人公の道子は、弟の準二の着物を縫い終え、次は兄の陸郎の着物を縫っていました。国策で和服を着ることになった兄のために、一生懸命作業しているのです。でも、道子は自分の時間が欲しいと感じていました。

ある日、道子は縫い物に疲れて、外に出てみることにしました。冬晴れの空の下、住宅街を抜けて多摩川の草原に出て、思い切り手を振ってみました。夕焼けが美しく、道子は久しぶりに自由な気分になりました。

その夜、彼女はこっそりと家を抜け出し、月明かりの下でランニングを始めました。女学校時代のランニング選手としての活力が蘇り、道子は堤防の上を駆け抜けることで生き生きとした気持ちを取り戻しました。

次の日からも、彼女はお風呂に行くふりをして、夜な夜なランニングを続けました。家族には秘密にしていましたが、母親は道子の長湯を怪しみ、兄の陸郎に後をつけさせました。しかし、陸郎もまたそのことを気にせず、友達の家に寄ってしまいました。

その後、道子の友達から手紙が届き、彼女が毎晩ランニングをしていることが家族にばれてしまいます。父親は娘の行動に興味を持ち、母親と一緒にこっそりと見に行くことにしました。

その夜、父親と母親は道子が月明かりの中で疾走する姿を見つけ、驚きと感動を覚えました。二人は自分たちも若々しい気持ちになり、笑い合いました。

道子は自分の自由を楽しみ、家族も彼女の新たな一面を理解するようになりました。これで、道子の心の中にある屈託も少し和らいだようです。

作品の時代背景

岡本かの子の『快走』は、昭和初期の日本を舞台にしています。この時代は、1930年代から1940年代初頭にかけての期間を指します。以下に、この時代背景の主な特徴をいくつか挙げます。

1. 戦時体制の強化

昭和初期、日本は第二次世界大戦へと突入する時期にありました。国家総動員体制が整備され、国民の生活も戦争遂行のために変わっていきました。道子が兄の和服を縫うシーンからもわかるように、国策に従った生活様式の変化が見られます。

2. 文化の変遷

この時期は、伝統的な日本文化と西洋文化が混在していました。物語の中でも、和服と洋服が混在する描写があり、道子がアンダーシャツとパンツを着てランニングするシーンからも、洋風の影響が見受けられます。

3. 都市化と近代化

昭和初期の日本は、都市化と近代化が進む一方で、伝統的な生活様式も色濃く残っていました。物語の舞台である住宅街や多摩川の風景描写には、都市化が進む中でも自然が残る昭和初期の日本の風景が反映されています。

4. 女性の役割と教育

この時代、女性の役割は依然として家庭中心でしたが、教育を受けた女性が増え、社会進出への意識も高まりつつありました。道子は女学校を卒業したばかりで、ランニングという自分の趣味や自由を追求する姿が描かれています。

5. 家庭生活の重視

昭和初期の家庭生活は、家族の絆や役割分担が強調されていました。道子の母親が家事を取り仕切り、家族全員が協力し合って生活する様子が描かれています。また、家族が道子の行動に関心を持ち、彼女の秘密を探ろうとする姿勢も、この時代の家族観を反映しています。

このように、『快走』は昭和初期の日本の社会、文化、家庭の様子を背景に、道子という一人の少女が自分の自由を求めて奔走する姿を描いた作品です。

岡本かの子について

岡本かの子(おかもと かのこ、1889年-1939年)は、大正から昭和初期にかけて活躍した日本の女性作家・詩人です。彼女は美術評論家であり小説家の岡本一平と結婚し、その間に生まれた息子が有名な芸術家の岡本太郎です。彼女は、作家としても詩人としても多くの優れた作品を残しましたが、その人生は波乱に満ちたものでした。

生い立ちとキャリア

かの子は東京で生まれ、早くから文学に興味を持ちました。大正時代には詩人として活動を始め、その後小説家としても頭角を現します。彼女の作品は、情熱的でありながら繊細な心理描写と美しい文章が特徴です。また、彼女は日本の古典文学や仏教にも深い造詣を持ち、それらの影響が作品に色濃く表れています。

作品『快走』について

『快走』は、かの子の作品の中でも、個人の内面的な自由と社会的な束縛の対比を描いた一作です。主人公の道子が家族の期待や社会の規範に縛られながらも、自分の自由を求めてランニングを続ける姿は、かの子自身の生き方や思考を反映していると考えられます。

かの子の思想と影響

岡本かの子は、女性の自立や自由、そして自己表現を強く求めた作家でした。彼女の作品には、女性の強さと美しさが描かれ、当時の社会における女性の役割や地位に対する挑戦が見て取れます。『快走』においても、道子が夜のランニングを通して自分の内なる自由を見つける姿が印象的です。

最後に

岡本かの子は、短い生涯の中で多くの優れた作品を残し、女性作家としての新しい地位を築きました。『快走』は、その中でも特に、彼女の人生観や価値観が反映された作品であり、時代背景と共に彼女の個性が感じられる一作です。彼女の作品を通じて、彼女の情熱と美学に触れることができます。

このように、岡本かの子とその作品『快走』を通して、彼女の人生や思想に触れてみるのはいかがでしょうか。

あおなみのひとこと感想

あおなみ

道子の自由を求める姿勢がとても印象的でした。
爽快に走り抜けるシーンは読者のこちら側も清々しい気分になりますね♪

令和の現代は多様性の時代なんてよく耳にしますが、作品当時は社会や女性の規範という縛りはとても大きかったのではないかと想像します。

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