【朗読】笑われた子/横山利一~迷える少年の選択~

あおなみ

こんにちは!
今回は横山利一の『笑われた子』です。

主人公の吉がどんな職業に就くのか葛藤します。
どんな職を選ぶのか、ぜひ本編でお楽しみください♪

目次

あらすじ

※ネタバレを避けたい方はスキップしてください!

これは吉という少年の話です。吉の家族は毎晩、彼をどのような職業に就かせるかを話し合っていました。お父さんは大阪に送ることを提案し、お母さんは水が悪いから反対、兄は農業を勧め、姉はお茶碗造りを勧めました。吉はその間、酒瓶から酒を舐めて怒られたりしていました。

その夜、吉は夢で大きな顔に笑われました。次の日、学校でも教師に三度叱られました。家に帰った吉は剃刀を研いだり、屋根裏で何かを作ったりして過ごしていました。家族は吉の職業を決めかねていましたが、ある日、吉が屋根裏で作っていた仮面を見つけました。父親はその仮面を見て「よくできている」と感心しました。

その後、吉は村で下駄屋を始めました。彼の作った仮面は店の鴨居の上でいつも笑っていました。吉は二十五年間、仮面の下で下駄を作り続け、貧乏していました。

ある日、仮面を見上げた吉は、仮面が自分を馬鹿にしているように感じ、怒りと悲しみが交互に襲いました。そしてついに仮面を割ってしまいました。その割れた仮面を見ていると、吉はそれで立派な下駄が作れそうだと感じ、満足した気持ちが戻ってきました。

こうして、吉は自分の道を見つけたのです。

作品の時代背景

この作品が書かれたのは昭和初期、日本の社会が大きな変革期を迎えていた時代です。農村部では伝統的な農業が中心の生活から都市への移住や産業の変化が進み、人々の生活や職業選択も多様化しつつありました。

物語の中で、吉の家族が彼の将来について様々な職業を議論している場面は、当時の社会が急速に近代化し、職業選択の幅が広がっていたことを反映しています。大阪などの大都市での商業活動、農業の継続、手工業の職人といった選択肢が出てくるのは、この時代の特徴です。

また、家族が吉の健康を気にしている場面からもわかるように、当時の医療や生活環境に対する不安も人々の重要な関心事でした。大阪の水質の問題や身体の弱さが議論の中に登場するのは、日常生活の中での現実的な問題を反映しています。

さらに、吉が夢の中で大きな顔に笑われる場面や、仮面を作ることに熱中する場面などから、当時の人々の心理や内面的な葛藤も描かれています。昭和初期は大正デモクラシーの影響を受けつつも、戦争の影が徐々に忍び寄る時代でもあり、人々の心には不安や期待が入り混じっていたことがうかがえます。

総じて、「笑われた子」は、昭和初期の日本社会の変化と人々の心理を繊細に描き出している作品と言えるかもしれませんね。

横山利一について

横光利一は、日本の昭和初期を代表する作家の一人で、1898年に生まれました。彼は新感覚派の作家として知られ、感覚や意識の流れを重視した独自の文体で多くの作品を残しました。

「笑われた子」は、横光利一の特徴的な作風がよく表れている短編です。この作品では、家族の中での吉の将来に対する議論や、吉の内面的な葛藤を描くことで、当時の社会背景や人々の心理を浮き彫りにしています。物語の中で吉が夢で大きな顔に笑われる場面や、仮面を作り続ける姿は、横光利一の感覚的で心理的な描写の巧みさを物語っています。

横光利一は、文学だけでなく映画や演劇などの他の芸術分野にも関心を持ち、それらの要素を作品に取り入れることを試みました。彼の作品は、時には実験的でありながらも、常に人間の内面や社会の変化に対する深い洞察を持っています。

彼の代表作には、「日輪」や「機械」などがあります。これらの作品でも、新感覚派ならではの斬新な視点と技巧が見られます。「日輪」では、彼の自然に対する深い洞察と、それを通じて人間の存在を問い直す姿勢が表れています。「機械」では、工業化の進む社会における人間の孤独と機械化の影響をテーマにしています。

横光利一はまた、川端康成らとともに「文藝時代」という文学雑誌を創刊し、当時の若手作家たちとともに日本文学に新風を吹き込みました。彼の活動は、新感覚派文学の確立と発展に大きく寄与しました。

1947年に49歳で亡くなりましたが、その短い生涯の中で日本文学に与えた影響は大きく、今もなお多くの読者に愛されています。「笑われた子」は、そんな横光利一の作家としての魅力が詰まった一編と言えるでしょう。

あおなみのひとこと感想

あおなみ

令和の現代は、作品の当時から比べるととんなでく職業が増えたと思う。

変化が激しい時代とよく聞くけど、これから先10年20年もしくは50年後にはどんな仕事が世の中にあるのだろうか。

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